少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

№230📕人間至上主義の誕生

お元気ですか。少年シニアです。

前回、神になろうとするホモ・デウスについて紹介しました。その昔、人類は自ら神という存在をつくりあげ、自分たちの解決できない問題や、わからないこと不条理なことは神の御心にその判断を委ねることで、心の平安と生きる意味を保持しようとしました。しかし、ニーチェが「神は死んだ」と言ったように、科学の発展や、科学をベースとした技術の進展により、神はその座を譲りました。正体不明の病気になった者は、神に祈るより最新の医療技術をもった病院を訪れるようになりました。

 

ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来

ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来

 

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 しかし、身体の管理は委ねても心の管理という問題があります。人類は生きる意味がなければ生きていけないやっかいな生物だからです。あらたな科学的な発見や応用は、生きる意味を至上課題とする人たちからみれば脅威です。科学は、客観的なデータを用意して人類は神から特別に優遇された存在ではなく、猿から進化した動物のひとつに過ぎないことを証明するからです。

 ただ人類はなかなかしたたかです。神にかわって人類は、科学・技術をベースにしながら「人間至上主義」という新たなイデオロギーをうちたてることで、生きる意味の滅亡を防ぎました。ルネッサンス万歳、芸術万歳、愛情と友情万歳、自由万歳、人類コミュニティー万歳 このようなスローガンをもとに人類は、神からの束縛をのがれ新たな世界の構築にむけて進みだしました。

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 チャップリンは「モダン・タイムス」で機械に職を奪われたり想像力や自由意志を奪われていく人間の悲劇を喜劇によって描き、多くの人々から賞賛されました。それは人間がまだ人間性を失っていなかったこととあわせて、その科学技術がこれから到来するであろうAIやバイオテクノロジーのレベルにまで達していなかったからかもしれません。そんなこともあって機械を動かすのは人間であるだけではなく、単純作業ではない創造的な仕事や豊かな経験に基づく判断業務は、機械にはできず、機械を管理統制できる人間こそが最も優れた存在であると考えるようになりました。

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 もう以前の神の世界へ戻ることはありません。それまで様々な判断を神の意志に委ねていた人間は、ルソーのいう「内なる自分の声」、いいかえれば人間性に基づいて判断するようになりました。人間の最大の関心事である「人生の目的」も、以前のように教会や伝統的な社会規範から与えられるのではなく、本人の自由意志に基づいて判断するようになりました。

いやその領域を越えて無目的に活動する宇宙の目的さえも人間が設定できることができる。人間は失いかけていた目的を再度手にすることに成功した・・・こうした人間至上主義が新たな規範として世界中に流布し新たなステージに人類はたったと、「ホモ・デウス」の著者ノア・ハラリは指摘したのです。

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 しかし、神の世界が宗祖が亡くなり時の経過とともに分派していくように、この「人間至上主義」というイデオロギーも分派していきます。そして「ホモ・デウス」の筆者ノア・ハラリは、西洋を中心に発展した「自由主義的人間至上主義」、ロシアや中国を中心に発展した「社会主義的人間至上主義」、ナチなどのファシズムとして発展した「進化論的な人間至上主義」の大きく3つに分派され、その違いによる軋轢が人間に新たな試練を与えたことを指摘しました。

 

その話はまた次回に