少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

№174📕水辺をねぐらにする個性派「テングザル」

 お元気ですか。少年シニアです。

前回、ふつうの猿とは少し違った「ゲラダヒヒ」を紹介しましたが、今回ご紹介

する「テングザル」も、サルの仲間では相当変わり種の部類にはいります。

どんなところが、他のサル達と違っているのでしょうか。

テングザル―河と生きるサル (フィールドの生物学)

テングザル―河と生きるサル (フィールドの生物学)

 

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  テングザルは、霊長類の中のコロブス亜科に属し、ボルネオ島の固有種です。テングのようなとりわけ長い鼻をもつのは大人のオスのみで、私は横浜のズーラシア動物園でこの独特の顔を見てすっかり魅せられてしまいました。

 

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 その風変わりな顔立ちのみならず、他の猿と異なっているのは、必ず川沿い、または海沿いの木の上で眠ることです。他にもカニ喰いザルなど川沿いの木で眠ることを好む猿はいますが、テングザルほど厳格に水辺に執着する種はいないと言います。ただ日中は川の背後にあるマングローブの森で活動するので足場の悪い森にはなかなか人が入り込めず、テングザルの生態はなかなか明らかにされませんでした。

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 著者はそんな中人が入り込めるエリアを発見し、実に累積で約3500時間テングザルを観察し、その知られざる生態を明らかにしました。

まずわかったのは、テングザルは殆ど何もせず休んでいるということでした。起きている時間の実に75%以上を休息にあてていたのです。(残りの25%は採食と移動と社会交渉)。これは同じ旧世界ザルのニホンザルとは全く異なっています。二ホンザルは休息は約3割にすぎず、6割弱が採食や移動に時間を使います。

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 これはテングザルの特殊な胃の構造に由来すると著者は指摘しています。テングザルを含むコロブス亜科のサルたちの胃は3〜4つにくびれており、反芻動物である牛や駱駝などの胃の構造と非常に類似しています。テングザルの主食は若葉ですが、胃には様々なバクテリアが共生していて通常は消化が困難な葉に多く含まれるセルロースを分解してエネルギーに変換させているのです。その分解・消化に相当な時間を要することが長い休息の理由でした。

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 またテングザルは若葉だけではなく、果実や花も食べることも明らかになりました。それまでは花や果実は食べないと言われていたので、これは新たな発見でした。ただ面白いことに、熟したものではなく未熟な果実を多く食べ、その上一番おいしい果肉を捨てて種のみを食べるというのです。

これは熟した果実を食べ過ぎて糖分過剰になるとバクテリアの活動は急激に高まり、胃を膨張させ死に至らしめるからではないかと著者は指摘しています。

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 そしてもう一つの何故水辺の木の上で眠るのか、またワニが棲む危険な川を渡って向こう岸に渡る行動がみられるのかという謎ですが、有力なのは木登りにも長けた肉食獣のウンピョウからの攻撃があった場合、すぐに川を渡って向こう岸に逃げ込むためという捕食圧からの回避説です。(川に棲むワニからの脅威を避けるために、向こう岸までの距離が短い場所を選んでいる)

ただ、これは有力な説の一つであり決定的なものではありません。川沿いという見通しのいい場所にいることで他の群れを見渡し、雄と雌の出会いの確率を高くするためといった説もあります。ただ、まだまだ決定的な理由はわかっておらず今後の調査結果が期待されます。

 

↓ 川を渡る雌に雄がワニへの警戒音をあげてフォローしている姿が印象的です。


Proboscis Monkeys | World's Weirdest

 

ボルネオ観光では、川下りのクルーズでテングザルを観賞するというツアーも行われているそうです。あまり遠くないうちに密かに参加してみたいと考えている私です。