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少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

№173📕ゲラダヒヒ流平和主義に学べ

お元気ですか。少年シニアです。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

各国が排他的になって自分と違うものへの寛容さを失い、平和が脅かされよう

としているこの頃の人間様の世界。

ちっとはこの動物を見習ってはどうかと思い、ゲラダヒヒを取り上げてみます。

f:id:tkbkun:20170107140432j:plain (by 少年シニア画伯)

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 本書の著者河合雅雄氏は、京都大学の霊長類研究所の教授として活躍されたサル研究の第一人者です。その河合氏がまだ四十半ばのときに、謎の猿「ゲラダヒヒ」を調査するため、エチオピアの奥地にあるセミエン高地に調査隊長として乗り込みました。

セミエン高地は首都アジスアベバから北へ1300㌔という途方もなく遠い奥地ですが、ゲラダヒヒはこのあたりにしかいません。ここはエチオピアとはいえ、海抜3800mという高地のため朝は零下3度、日中でも雨の日などは5〜6度にしかあがらないという厳しい環境なのです。こんな寒いところに住んでいる猿はあまりいません。さらに驚くべきは、ゲラダヒヒの社会は非常に複雑で、十数頭の小さな群れから700頭を越す大群を形成するものまでいるということでした。これも猿の社会では、他に見られません。

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 どうしてゲラダヒヒはこんなに大きな群れをつくって生きているのでしょうか。どうもゲラダヒヒは他の猿とは生き方・考え方が違うようです。

群れを構成するユニットは1頭の雄と1頭の雌からなる小さなものから、1頭の雄と8頭の雌がいる大きなものまであります。メスにはたいてい1〜2頭の子供がいるので、20頭以上になるユニットもあります。一見力の強い一頭の雄がすべてを支配しているように見えますが、そうでもありません。

実はセカンド雄というリーダーの補佐役がいて、リーダーの雄と雌たちとのけんかの仲裁をして、ユニットの平和を維持すべく頑張っているのだそうです。そのことによって、1頭の雌だけと仲良くされることが許されます。

また一般的に若い雄は、一定の年齢に達するとリーダーの脅威になるため群れから追放されるというのが常ですが、ゲラダヒヒの世界では、ユニットからは離れるものの、その集合体である大きな群れ(バンド)には留まることが許されます。これも他の猿では見られない光景だそうです。

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 あと面白いことにユニットから離れて自由に行動しようとする雌に対して、リーダーの雄は怒りを表すものの、そう強い態度に出ることはなく、少し怒ってたしなめはするものの、その後おだてたり慰めたりしてユニットに留まるよう穏やかに対応するそうです。同じヒヒでもサバンナや砂漠などに棲むマントヒヒが、雌を暴力で従わせて、恐怖をうえつけることで雌を支配しようとするやり方とは異なります。

ゲラダヒヒの平和主義は、喧嘩をしないという意味の平和主義ではなく、喧嘩のあとのフォローや、行きつくところまで相手を追い込まないという意味での平和主義ということが言えるでしょう。

 

 ↓ 喧嘩はするものの、追っ払うだけで結構あっさりしている様子も見られます。(2:25)

  また喧嘩した後グルーミングをしている雄と雌もいます。(3:45)


Gelada vs. Gelada | World's Deadliest

 

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 どうもゲラダヒヒの社会構造はかなりゆるいつながりのようです。著者は群れの順位を確認するため2頭のリーダーの間に好物のむぎを置いたところ、威嚇しあい時に喧嘩はするものの決着がつかず順位がはっきりしなかったそうです。

群れが大きすぎてそれを統括する力のある雄の存在ができないのかもしれません。こうしたゲラダヒヒの社会構造は今後の人間社会の構造を考えていくうえでも参考になるのではないでしょうか。小競り合いはあっても大きな争いを生み出さないため、四角四面の窮屈なグローバル社会でもなく、個々が自分の殻に閉じこもった社会でもないゆるいつながりをどう作り上げていくか、

この第三の道が、人間にとってベターな戦略のように私には思えるのですが・・・。