少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

微細なものと壮大な宇宙構造について

 お元気ですか。少年シニアです。

今でこそ「リケジョ」は市民権を得ましたが、中村桂子さんはリケジョの元祖と言え

る方で、DNAの微細な世界から生物界全体のマクロな話まで、生命をわかりやすく

教えてくれる学者です。そして何より生命科学を生活と歴史の視点 いわば生命誌

して提唱されていることで有名です。

イラストレーターの和田誠氏も中村生命誌の虜になった模様で新聞の書評委員が集ま

る会合で中村さんのイチジクコバチの話を聴いて、好奇心に火が付き自ら対談を申し

いれ、本書の刊行に至ったとのことです。

生き物が見る私たち

生き物が見る私たち

 

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 イチジクコバチは、文字通りイチジクと共生関係をもつ蜂で、イチジクの種類に応じたイチジクコバチがいるそうです。イチジクの実には小さな穴があいていてそこに花粉をつけたイチジクコバチの雌が侵入し卵をうみつける。一方イチジクの雌花はそのコバチが運んできた花粉を受取り受粉することで種をつくる。双方が利益を得るという仕組みです。

卵から幼虫になったイチジクコバチは、イチジクから栄養をもらって成長、成長した雄コバチと雌コバチは交尾、雄はイチジクの実に穴をあけ受胎した雌が花粉をつけてその穴から出ていくのを見届けると一度も外の世界を観ることなく死んでいきます。雌の方は卵をうみつけるイチジクを探して、小さな穴から入り込んで卵を産みつけ花粉はイチジクの雌花に引き渡す、そしてその仕事を終えるとイチジクの中で死んでいくというサイクルで互いの生命が引き継がれていきます。

まさに生命誌ともいえるストーリーが共生関係の中で展開されるのです。

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  この他、話は「性遺伝子の違いによる男女の生命力比較」「恐竜」「クローン技術」「サルとヒトの違い」等々に及びますが、好奇心旺盛のお二人の丁々発止のやりとりは実に楽しい。お二人とも当時60半ばですが老成した話は全くなく、好奇心溢れる少年・少女のやりとりそのものです。

そう言えば、和田さんのイラストを見ると、いつも星新一さんのショートショートを思い出します。星新一さんの作品も創造力にあふれた軽妙でユーモアのあるものが多かった。科学をユーモアをもって眺めると、楽しい景色が広がってくる気がします。

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  中村さんの生命観は生命を歴史的な視点でとらえており、前回ご紹介した今西博士の自然学に通じるものがあります。ただ今西博士が分子生物学に対してかなり懐疑的にとらえているのに対し、中村氏は遺伝子の解析や研究に肯定的なとらえかたをしているように感じます。本書においても「DNAは司馬遼太郎さんより面白くて壮大な歴史物語を語っていると思うんです」というくだりがあります。

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 宇宙のビッグバンも生命も、目に見えない微細な世界と、それを包含する途方もない大きな構造が矛盾することなく相対しているのが実に興味深いところです。それを自分なりにどう仮説をくみたて解釈していくか、科学の愉しみはこんなところにあって、それがそんな遠いところではなく日々の生活の中や我々の身体の中にその真実が隠されていると思うと、やはりこのテーマは一大ライフワ-クになるぞとにんまりしているところです。