少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

№84📕植物の開拓者シダの扉を開けて見える世界

シダの扉―めくるめく葉めくりの世界  【使用教材】著者 盛口 満 2012年2月刊 八坂書房

お元気ですか。少年シニアです。

今回は、上陸して最初に維管束を発達させ、今につながる森林の植物世界の基礎を築いたシダ植物と、そこから広がっていく自然と人類のお話です。

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 根をもたずに光合成のみで栄養を獲得しニッチな場所を確保していった苔に対し、シダ植物は、根と維管束を発達させることで上部に生息空間を拡大し、光に垂直に葉をつけるという植物の王道路線を突っ走って、裸子植物が登場するまで、植物のトップランナーとして君臨しました。その風貌は極めて地味ではあるのですが、実は様々な種があり、我々人類の文化や食生活にも大きな影響を与えています。

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 例えば、食で言えば、ゼンマイやワラビなどがすぐ浮かんできます。しかし、著書によれば、これは地域によって大きく変わってくるそうで、たとえば、著者が住む沖縄では、七草粥を食べる習慣がなく、その知名度も低いとのこと。またスギナの胞子のう穂である土筆の知名度も極めて低いそうです。

ただ、島によっては、タマシダの玉(胞子のう)をビー玉代わりにしたり、神事のお供えの下にシダをしいたりと多様な形で使っているという事実があり、シダと人間のかかわりは地域やその自然環境によって大きく異なるんですね。

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これが世界となると更にシダへの見方に違いがでてきます。例えば英国では、「我々の知る限り、この植物には何の使い道もない。その粗い茎は、牛も見向きはしない」と極めて冷淡な評価をシダに下していますが、我が日本の誇る本草家の貝原益軒は「花茎を煮食す。味よし 毒なし。馬好んで食う(中略)その乾したるを外医用ゆ」と高く評価しています。

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 本書の「シダの扉」とタイトルには、「シダだけを深く掘り下げて研究するのではなく、シダという植物を通して初めて見える世界にまで思いを致す」ことの重要性が込められています。

そして、この影には著者同様に理科の教師をしていたお父さんの存在がありました。子供の頃、自然の中に連れていくだけでなく,植物の研究者の話を聞くように促したりして、様々な角度から自然を学ぶ環境を与えてくれました。

そして著者が教師になった後も、教師としての心構えなどアドバイスをしてくれたそうです。いずれも味わい深い言葉だと思います。

「生き物には、必ず歴史と暮らしがある」

「教師はわからないことがあったら、生徒の中に降りていくこと」

「死んだら原子・分子に戻るだけだ

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 実はお父さん自身の自然の扉を開いたのも、コウヤワラビというシダ植物だったとのことです。まさに親子そろってシダが自然と教師の道を開いてくれたんですね。

 そんな環境で育ったからか、著者のメッセージもお父さんに負けぬ深さを感じます。このように語り,締めくくるのです。

「いい授業とは、生徒の常識から始まり、生徒の常識を超える内容になっている授業だ」

僕らは豊かになった。そして何かを見失った。それは自然と向き合う時間だ」

「僕らは重層的な歴史である自然を知ることができる存在なのだ。さらに伝えることができる存在でもある」

 私も同感です。学問とは学問対象だけを堀りさげるだけでなく、それを扉にして新たな世界を知る。それこそが学問の醍醐味と思うからです。

 

 ⇩ 国内最大のシダ植物 ヒカゲへゴです。最大で15㍍もあるとか。


生きた化石ヒカゲヘゴ(No0131) - YouTube