少年シニア 55歳から学ぶ理科

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№68📕進化必然論でグールドに対抗したモリス

 

進化の運命-孤独な宇宙の必然としての人間

 【使用教材】進化の運命 著者S・K・モリス 訳者 遠藤一佳・更科功 2010年7月刊 講談社

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 科学者の世界は何と複雑なのでしょう。本書の著者モリスは前回紹介したグールドの著書「ワンダフル・ライフ」の中で主役級を演じた登場人物のひとりです。

なぜ主役級かと言えば、カンブリア紀のバージェス頁岩の発見者ウォルコットが、その化石の異質性を認めず既存の門にすべて押し込んでしまったことに異議を唱えたウィッチントンの助手としてカンブリア紀の異質性を自ら実証した学者だからです。

ところがモリス自身は、グールドが自分達の発見を拡大解釈して、あまりにもその異質性と偶然性を誇張して世に発信したことが気にいらなかったようです。

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 カンブリア紀の爆発はグールドが大袈裟に騒ぐほどの異質性はなく、偶然性もなかったとモリスは主張し、反グードルの姿勢を鮮明にしました。

モリスによれば、もう一度カンブリア紀から何回テープを再生しても、人間のような知的生命体は誕生しただろうとします。(グールドはわからないという考え)

生物の身体や機能には自ずと制約があり、進化の道筋には限界があるとしたのです。

本書において、特に生命の進化は、短期的には偶然性に左右されることはあっても、長い時間の中で、最終的には必然的な方向に進むとするモリスの考え方を、様々な「収斂進化の実際」を提示することで鮮明にしていきます。

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 収斂は、生命活動が極端な状況におかれた時に生じやすく、進化の選択の余地がすくなくなると、収斂=規範という状態になり偶然性が入り込む余地がなくなるというのがモリスの考え方です。

 例えば、

マッコウクジラと象の社会組織(遠くまで届く発声法を駆使して連絡しあう等)が

 よく似ている。

*長距離を渡りする鳥の羽根はとがっていて骨の構造も似ている。

*昆虫にみられる新社会性の構造(太って殆ど動かない女王と武装して鋭敏な兵隊)は、

   哺乳類のハダカネズミも見られる。          などなどです。

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 モリスのいう生物の共通性や収斂は、特別な動物とされる人類にまで及びます。

*人間同様、仲間内で認識できる言語を使ってコミュニケ―ションするイルカ。

*石という道具を使って穴を掘るコバチ

*二足歩行し道具も使うフサオマキザル

 *とってきた葉に菌を増殖させて農業をおこなうハキリ蟻。

こうした事例をもとに、知的で社会性をもつ生命は人類だけのものではなく、これらも一種の収斂の実例であり、仮に今と全く同じような人類があらわれないとしても、こうした知性・社会性を備えた生物への進化は間違いなく起きたとするのです。

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 異質性を強調するグールドに対してモリスは生物の多様性は認めつつも、共通されるものにも光をあてて、その中で進化の広がりにも一定の限界と、限界による一定の方向性(必然性)があることを強調したわけです。

両人の論争自体はグールドの死によって幕を閉じますが、偶然派vs必然派の論争はまだまだ継続中とか。まあこうした激しい論争によって、より真実が明らかになっていくのであれば、こうした知的論争はぜひ続けてもらいたいと思います。

 

⇩ フサオマキザルの頭脳・表情 これもモリスのいう収斂の進化なのか?


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