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少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

№67📕生命の進化は偶然なのか・必然なのか

ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)

 【使用教材】ワンダフル・ライフ 著者S・J・グールド 訳者 渡辺政隆 1993年4月刊 早川書房

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 カンブリア紀の生命の大爆発を語るに欠かせない書が、稀代の古生物学者S・J・グードルが書き下ろした「ワンダフル・ライフ」です。

本タイトルはもともと1946年に上映された映画「イッツ・ワンダフルライフ」から引っ張ってきているようで、そのキーワードは「偶発性」です。

グールドは本書で、ただカンブリアの大爆発の事実を語るだけでなく、生命の進化の大半が「偶発性」によって進化したということを主張し、偶発的なことがあるから世の中は素晴らしい!と結論づけました。

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    グールドが着目したのは、何故カンブリア紀に生命の大爆発が起きたのかということではなく、その後の悲運多数死によって、どのような構造の生き物が生き残り、それは何故なのかということでした。

例えば、カンブリア紀で最強の捕食者といわれたアノマロカリスは、生き残ることができず、その後絶滅しました。相対的な強さが生残りと直結しなかったのです。

またバージェス頁岩では20種類も確認された節足動物は、4種類だけしか生き延びることはできませんでしたが 必ずしも能力の優劣とは関係ありませんでした。

逆にカンブリア紀に細々と生きていた脊索動物は、数も少なく貧弱な生き物でしたが生き残り、脊椎動物である我々人類への道を閉ざすことなく生き延びてくれました。

 このことから、グールドは「生物の強弱」ではなく「偶発性」こそがその後の進化の展開を左右するという主張をしたのです。

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  皮肉にも、バージェス頁岩を発見しカンブリア紀の大爆発の姿を世に示したウォルコットは、生命は予測どおりの経過をたどって下等なものから優れたもの(人間)に漸進的に進化したとする伝統的な進化論者でした。

しかしバージェス頁岩で示された多種多様な(現在の動物の門水準がこの時点で出そろっている)姿は、「多細胞生物はスタートしたとたん最大の多様性に達してしまい、その後に悲運多数死があって、わずかな種類のデザインのものしか生き残らなかった」という明らかに自説と矛盾した姿をウォルコットにつきつけたのです。

ただ、伝統的な進化論の固定観念に凝り固まっていたウォルコットは、躊躇することなく、これらの多様な種は、いまも脈々と生きつがれている既存の動物の分類に属するものと決めつけ、カンブリア紀の異質性を封印してしまいました。

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  彼の死後50年たって、カンブリア紀の生命の異質な多様性は、ウィッチントンの再調査により明らかにされ、本書でもその経緯がかなり克明に記されています。

 ただグールドが強調するカンブリア紀の異質性や偶発性の程度に関しては、カンブリア紀の前後の地層からの新たな化石の発掘結果から再検証が進んでおり、まだまだこの議論の決着はついていないようです。

自身の人生でさえ、自分の能力に起因する必然性と、運不運による偶発性が入り混じって今ここにあることを思うと、地球規模の出来事においても一律にどちらとはいえないというのが、私の正直な感想であります。

表紙に掲載されている奇妙な動物は、左上がオパビニア 右下がハルキゲニア。いずれも、カンブリアの末期に絶滅した動物です)