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少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

№63📕何故生物は有性生殖を選択したのか

有性生殖論―「性」と「死」はなぜ生まれたのか (NHKブックス No.1212)   【使用教材】有性生殖論 著者 高木由臣 2004年1月刊 NHK出版

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 細胞に核をもたない原核生物だけの世界に、核をもつ真核生物が加わったのが約20億年前と言われています。最初の真核生物は1㍉にも満たない微生物ですが、それでも、原核生物の1000倍ほどの大きさがありました。

真核生物は原核生物だったミトコンドリアの祖先を取り込み、酸素をエネルギーに変換することで成長するとともに、核にDNAを格納することで活性酸素から身を守りました。そして雌雄という性を分化させ有性生殖を行い出ました。

ただ無限に増殖する能力を捨ててまで、なぜ有性生殖を行い性をもたねばならなかったのでしょうか。

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 原核生物は全て単細胞生物細胞分裂により増殖をします。細胞分裂で増殖し続けるので、餌がなかったり天変地異による事故さえなければ死にません。

ところが有性生殖をする真核生物は必ず老化して死ぬのです。なぜ死んでしまう有性生殖を選択する生物が現れたのでしょうか。

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 定説では、自分と異なる遺伝子をもつ子孫を作ることで、不慮の事態でも全滅しないようにした。つまり多様化によってリスクの軽減を行ったという説が有力です。

ただ本当にそうかというのが著者の意見で、有性生殖の起源は突然変異の有用性の検証にあったのではないかと言います。正直私はこの著者の説を理解する能力がありません。それよりおもしろかったのが、真核生物の死が生物の進化上必然であり必要だったという著者の見解でした。

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 著者は単細胞で真核生物のゾウリムシ研究の第一人者なのですが、ゾウリムシが属する繊毛虫類は餌があるときは無性生殖で増殖し、餌がなくなると有性生殖をして子孫を増やすという何とも器用なことをやってのけるです。

そしてゾウリムシは有性生殖後は、細胞分裂を繰り返すことで老化していき死を迎えます。死に至るまでの長さは種によって異なり、たとえばヨツヒメゾウリムシは300〜350回の分裂で死ぬそうです。

 真核生物の餌は、原核生物や他の真核生物です。原核生物だけの平和な時代から戦国時代に突入したのです。だからこそ生き残りをかけて自分より優れた子が発生する可能性をもつ有性生殖を選択し、子どもを産むという種の若返りのかわりに、自身は老化・死の運命を甘んじて世代交代を受け入れたのかも知れません。

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 人間の世界ではアンチエイジングなる考えが広まっています。しかし老化や死が進化のシステムの中に組み込まれているとすると、行き過ぎたアンチエイジングは、自然の摂理に逆行する行為ということになります。

様々な考えがあるのは承知していますが、私自身は自然な老化には敢えて逆らうことはせず、死に臨んでは寿命をただ引き伸ばし死を先送りするだけの延命治療はしないつもりでいます。

死は生物の偉大なる発明であると言ったジョブスに私は賛成したうえで、生きている間はその生を精一杯謳歌したいと願っています。