少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

№58📕Lカーソンが愛した生命の環について

失われた森―レイチェル・カーソン遺稿集 (集英社文庫)

【使用教材】失われた森 著者 Lカーソン(編者リンダ・リア) 訳者 古草秀子 2009年7月刊 集英社

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  稀代のネイチャーライター レイチェル・カーソンのように生命や科学を詩情深く表現できたら、どんなに素晴らしいかと思います。著作「沈黙の春」「われらをめぐる海」で普段は生き物や科学に関心を示さない一般人まで生命の虜にし、環境への警鐘を鳴らしてケネディ大統領の心をも掴んだカーソン。

彼女は科学は生活の一部であるとし、次のように言いきりました。

 

美を感じる心や新たな未知なるものに出会う感動、共感、憐れみ、賞賛、そして愛といった感情がいったん呼び覚まされれば、誰しもがその感情の対象について知識を得たいと願うものだ。

 

海を描いた私の本に詩情が感じられるとすれば、それは私がわざわざ書き添えたのではなく、海をあるがままに描こうとすれば、自ずと詩情ぬきには済まされないということなのです。

 

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 カーソンはしばしば「地球の並外れた美しさ」という表現で地球を賛美し、鉄とコンクリートでその並外れて美しい地球を自分達の手で隔絶するだけでなく、効率社会をつくるために環境をいとも簡単に破壊する者たちを厳しく糾弾しました。とりわけ「沈黙の春」で農薬が生態系を破壊し多大な環境被害を与えていることを書き起こすと、化学企業は猛烈なアンチカーソンのキャンペーンをはりました。

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 著書がベストセラーになったことで経済的基盤を得たカーソンは、海洋研究所を退き、いつも海が見られるメイン州に住居を構え執筆活動に専念しました。そして自宅の北部にある1マイルほどの海岸線沿いの森を「失われた森」と名付け、この森を自ら購入してまでその環境を守ろうとしました。予想以上の資金が必要だったためカーソンの希望はかないませんでしたが、その後、この森は環境保護地区に指定され、カーソンの願いはかないました。

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 好むと好まずに拘らず環境破壊者との闘いの日々の中で忙殺され、カーソンの身体は悲鳴をあげ、癌という病魔が蝕みました。本書では、一時自宅の隣に住んでいた親友のドロシーにオオカバマダラという蝶の生命の終わりの旅立ちの様子を伝え、こんな文章で、永遠の別れを示唆する手紙を認めました。

 

 あの光景はあまりにも美しかったので、蝶たちがもう決して戻ってこないという事実を口にしても悲しさは感じませんでした。それに全ての生きとし生けるものが生命の終わりを迎えるとき、私たちはそれを自然の定めとして受け入れています。(中略)

きらきら輝きながら飛んでいった生命がそう教えてくれました。私はそのことに深い幸福を感じました。あなたも同じように思ってくださるよう願っています。今朝は本当にありがとう。

 

 この文章には、生がある以上死は避けられないものだが、それは決して不条理なことではなく、死は次なる生に繋がっていくという生命の本質が端的に描かれています。

自分の死を前に、最後まで詩情をこめた文章で相手のことも気遣いながら、生命の真髄を語るカーソンの誠実さに、ただただ感動しました。