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少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

№54📕共生生命体という戦略の柔軟さについて

共生生命体の30億年 (サイエンス・マスターズ)

【使用教材】共生生命体の30億年 著者 リン・マーギュリス 訳者 中村桂子 2000年8月刊 草思社

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 「パラサイト・イヴ」という小説があります。映画にもなったのでご存知の方もいらっしゃるかも知れません。ミトコンドリアという酸素からエネルギーを作り出してくれる細胞の小器官が、ある女性の身体を乗っ取り自分の子孫を残してくれるにふさわしい男に近づくという瀬名秀明氏のホラー小説です。

このミトコンドリアの祖先は、細菌だったという説が有力です。酸素を嫌う古細菌ミトコンドリアの祖先と遭遇し、この2つの生物が共生関係をもつようになりました。古細菌は、ミトコンドリアに住居を提供し、その変わり苦手な酸素の処理をミトコンドリアに任せその対価としてエネルギーを得たというわけです。

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 著者は、遺伝子の突然変異や自然淘汰だけで生命の進化を説明することはできないとし、細菌細胞の融合と合体という共生によって進化を遂げていった道筋があると主張します。これを一般に「細胞内共生説」と言います。

ヒトの細胞内にあるミトコンドリアや植物の葉緑体など、共生により生命を維持・発展させている姿はあちらこちらで見られます。マーギュリスは、細胞に核をもつ真核細胞は、このような共生を選択したことで生き残り繁栄していったと説きます。

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 進化は、自然淘汰を避けて共生という選択肢もあるということですが、一方でこの共生自体が、ライバルに打ち勝つための戦略とすれば、この共生は決して他者との競争を排除した論理ではないという気がしないわけではありません。

 以前ギャンブルの神様と言われた阿佐田哲也さんのエッセイに、競争と協調は矛盾することではなく、しっかり愛せる者でなければ、きっちりと戦うこともできないと書いてあったのを思い出しました。

 そう考えると、マーギュリスが説く細胞内共生説はダーウィ二ズムを全く否定するものではないと言えるかもしれません。

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 こうした生物界の共生と競争に思いを致すとき、人間の中の経済活動や政治活動においてもこの原理が厳然として存在していることを認めざるをえません。ただ、闘争嫌いな私としては、マーギュリスがこうした共生進化説を説いてくれたことは、すごく救いになり彼女に感謝したくなります。

 なお、マーギュリスは、宇宙天文学者で宇宙番組「コスモス」をプロデユースしたカール・セーガンの最初の妻でもあります。本書でも彼との馴れ初めやどんな点に惹かれたかを臆面もなく語っています。マーギュリスの視野の広さも、広大な宇宙を考え続けていた夫カールの影響もかなりあるのではないでしょうか。