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少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

№39📕長沼毅の生命論の素敵さ恐ろしさについて

死なないやつら (ブルーバックス) 【使用教材】死なないやつら 著者 長沼毅 2013年12月刊 講談社

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 科学界のインディジョーンズ 長沼毅氏の生命論はいつ読んでも面白く新たな発見があります。深海や南極など辺境な地にむかう行動力も凄いけど、氏の最大の魅力はとことん突き詰めるその思索の深さにあると思っています。

生命の定義とは通常「代謝する」「増殖する」「細胞膜がある」という3点セットで語られ、それで済まされることが多いんですが、長沼氏はそこで留まらず「生命とは何かーとは何か」という哲学的な問いを我々読者につきつけた上で持論を展開していくのです。

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 長沼氏はまず生命を「負のエントロピーを食って構造と情報の秩序を保つシステム」と定義した物理学者のシュレディンガーの説を紹介します。エントロピーの増大とは、物理の最強法則で、宇宙空間に存在する物質は必す乱雑さを増大させるという法則です。負のエントロピーはその逆ということですから、生命は物理法則に反して秩序を保ち続けようとすることになります。生命自体、化学的にも不安定な有機物らしい。長期の不安定さは死を意味するので、死を回避するためエネルギーを摂取し続けることが余儀なくされるーこれが生命ということです。

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 長沼氏はここで環境に対応した「進化」こそが 生命の維持継続の重要要素であるとして、地球最初の生命ーつまり我々の先祖である「微生物」について言及します。

いまも深海や極寒の地に生息する微生物は、驚くべき能力をもったものがいるようです。例えばハロモナスという高度好塩菌は、高度の塩分があろうが真水だろうが、南極のような極寒だろうが、200度の熱水が吹く大西洋中央海嶺だろうが委細構わず棲息しています。その上、食べ物がないところでは化学合成により自分で栄養をつくりだして生きるというとんでもなくタフな生き物だそうです。

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 恐らく40億年前地球で最初に誕生した生き物はこのようなとんでもないタフな微生物だったと思われます。そして単細胞生物から多細胞生物へと多様化・進化していくことで、40億年生命を絶やすことなくつないできたのでしょう。長沼氏は、これを「渦巻としての生命」とします。渦巻を構成する水はどんどん入れかわっていきますがうずまき自体が消えることはない。そんなリレーがこれまでの生命の辿ってきた道だというのです。

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 ここで終われば、めでたしめでたしとなるわけですが、ここで終わらないのが長沼流です。実は宇宙は「最強の物理法則であるエントロピーを増大させるために生命を誕生させたのではないか」というのです。つまり生命があった方が宇宙は乱雑になり早く消滅するというのです。何ともやりきれない結末です。この説を読んで私はさらに悲観的なことを考えてしまいました。宇宙はふつうの生命の誕生ではまだ生ぬるいとして、人間を誕生させ宇宙自らを消そうとしているのではないかという考えです。

長沼氏はここまで悲観的ではなくホモサピエンスは、さらにホモ・パックス(平和な人)ホモ・ホスぺス(おもてなしの人)へと進化していくことを示唆して私の悲観論を打ち消してくれました。私もそう願います。