少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

№35📕気紛れな雲を分類した男について

雲の「発明」―気象学を創ったアマチュア科学者 【使用教材】雲の発明 著者Rハンブリン 訳者 小田川佳子 2007年1月刊 扶桑社

                    

 生命は海の中で誕生したという説が有力です。しかし地球が誕生した時の海はどろどろのマグマに覆われていて今の海とは程遠いものでした。少なくとも水の海ではありません。但し大気上には水蒸気が集積し雲が形成され、雨になるのを今か今かと待ち受けていました。まず海が形成される前には雲が形成されていたわけです。そこで海の誕生を学ぶ前に本日は雲の勉強をいたします。

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 気まぐれに形を変えていく雲は、古来より哲学者・科学者の悩みの種でした。あのアリストテレスデカルトでさえも雲の解明は優先課題としながらも、かなり手をやいたようです。劇作家ゴールドスミスの言を借りれば「すべての雲は動き、すべての雨は降って哲学者の自尊心をいたぶり、空気の隠された性質を見せつけ、哲学者はそれを説明できないありさま」だったのです。雲の分類についても様々な者が挑戦するも、大衆を納得させる説明と呼称は19世紀になるまで現れませんでした。

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 そこに彗星のように現れたのが、30歳のアマチュア学者(化学品製造者職員)のルーク・ハワードでした。1802年2月に行われた講演会「雲の変位」は、理に適っていて、わかりやすい内容だったことで聴衆の大絶賛を受けました。ハワードは雲が実際に水滴と氷から形成され急速に冷却した大気下層部を上昇するに従い、気温の下降によって蒸気が凝結したものと主張し、空気の対流構造や発生位置によって形が変わる雲を「巻雲」「積雲」「層雲」の三つの基本形に分類しましたその上で各々の混合型「巻積雲」「巻層雲」「積層雲」「巻積層雲(乱雲)」を加えた計7種類に分類できることを、ハワード自身がスケッチした絵をもとに説明しました。

これまでこのようなシンプルで明快な分類を提示した科学者はいませんでした。この講演会にきていた出版社の幹部が直ちに本の執筆を依頼。ハワードの名と主張は一気に広まり、ここに世界で最初に雲の分類がオーソライズされました。(その後の議論によりハワードの分類をベースに現在は10種類となっています) 何とあの科学には一家言もつゲーテまでハワードを絶賛して会見を要望。そしてこの分類にそった雲の詩を書き上げました。

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 ハワードが講演をおこなった当時の英国では、科学・気象は一般市民の大きな関心事であるとともに娯楽のひとつでもありました。お金を払って科学の実験や講演を楽しんでいたのです。これは18世紀後半の異常気象や、気球やパラシュートの発明により、空や大気に関して科学の力で真理を知りたいという大衆の知的好奇心が背景にあると思います。そんな欲求もハワードの主張をあと押ししたのでしょう。まさに時を得てのハワードの講演でもあったわけです。これをきっかけとして気象学という学問が確立。ますます雲の行方に皆が注目されるようになったというお話でした。