少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

№22📕木星に対する特別な想いについて

2010年宇宙の旅〔新版〕 (ハヤカワ文庫 SF) (文庫) (ハヤカワ文庫SF)

 

 

【使用教材】2010年宇宙の旅

     著者 アーサー・C・クラーク 訳者 伊藤典夫 

     2009年11月25日刊 早川書房

  

                                                                            

 木星は太陽系最大の体積・質量を誇る惑星で、地球と比べ体積で約1300倍 質量で約320倍の大きさです。あの大赤班だけで地球が2つ分以上はいると言いますからそのスケールは太陽系の中で跳びぬけています。当然のことながら重力も強大で、衛星も現段階で67個が発見されています。そして数の多さだけでなく、「現在も火山活動をしているイオ」「氷の表面の下に液体の水があり生命の存在が期待できるエウロパ」「惑星の水星よりも大きく太陽系最大の体積を誇るガニメデ」など個性的なパートナーを引き連れています。ここまでくると太陽系の一部というより、木星を中心とした独立世界を構築しているとさえ思います。

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 このような木星の特別感が多くの人のロマンを掻き立てるのでしょう。木星を題材にしたSF小説が多数うまれています。特にSFの巨匠であるクラークの代表作「2001年宇宙の旅」「2010年宇宙の旅」は木星及びその衛星を舞台にした傑作です。クラークは木星が太陽の長男坊の座に甘んじることをよしとしなかったようで、「2010年宇宙の旅」で木星を解体させ、新たな恒星「ルシファ」に生まれ変わらせ、隊員たちにこう言わせます。

 「わかっているのは、木星が太陽に変わったということだけだよ」                                   「木星は、それには小さすぎると思ってたんだけれど、だれかが木星を”できそこないの太陽”といっていなかった?」「そうなんだ」とワーシリ。                                   「木星は融合反応を起こすには小さすぎるー手助けなしではね」

 木星が太陽になるため(つまり核融合反応を起こすため)には、現在の80倍以上の質量が必要だそうです。そこでクラークは小説の中で謎の物体「モノリス」を増殖させることで木星の質量を増大させたのでした。

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 「2010年宇宙の旅」の冒頭で、クラークはこの本をソ連の偉大な宇宙飛行士の「レオーノフ」と偉大な科学者「サハロフ」に捧げると記しています。小説内においても米ソ両国の科学技術者が協力しあって、全世界的任務を実行していく姿が描かれています。クラークが本書を書いたのは1981年。ソ連のアフガン侵攻で米国がモスクワオリンピックをボイコットし激しく睨みあった時期でした。この微妙な時期に全世界的な課題を米ソ協力体制を前提に、この小説を組み立てたのは、宇宙の前では米ソもない、互いの宇宙開発の貢献を素直に評価し知見を結集して宇宙開発の未来を切り開いてほしいという強い願いがクラークにあったのでしょう。そして、その舞台として広大で威厳のある木星が最も相応しいと考えたのだと思います。