少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

№16📕金星が世界を一つにした事件について

金星を追いかけて    

 

 

【使用教材】 書名 金星を追いかけて                              著者アンドレアウルフ 訳書 矢羽野薫 2012年6月30日刊 角川書店
             

                                                                        

 ハレー彗星で有名なエドモンド・ハレーは、彗星を予測しただけの人ではないことが本書を読むとよくわかります。ハレーは1761年6月6日金星が太陽の表面を通過することを予測し、この時の通過時間を世界の各地で測定すれば、地球から太陽までの正確な距離がわかると1716年に論文で発表しました。ハレーはこの時60歳なので、45年後の金星の日面経過に立ち会うことはほぼ不可能です。この論文は後輩に自分の夢を託すハレーの遺言なのです。

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 この遺言をドリルというフランスの重鎮の科学者が実現させます。科学アカデミーでこのハレーの構想を提言し、それが承認されるのです。当時7年戦争で敵国だった英国の王位教会にも参加を呼びかけます。ハレーは英国人ですし1639年に初めて金星の日面経過を観測したボロックスも英国人ということもあり、王位教会は参加を決めます。更にロシア・スエ―デンと輪が広がって、世界的なプロジェクトに進展していきます。連携と言っても国家からすればその本音は国の威信をかけた戦いであり、選抜された観測者からすれば自分の名を終生残したいという野心であり、その実態は非常にドロドロしています。

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 このビックプロジェクトは、ひたすら夜空を観察する単調な仕事に縛られていた大半の天文学者に夢と光を与えたようです。選抜された天文学者たちは、命を落としかねない危険な航海も厭わず、指定された観測地に向かうのです。戦争中ということで敵船から攻撃を受けたりするのですが、強い野心と使命感で突破していきます。その観測地点は、ロシア ノルウエー タヒチ メキシコ インド モーリシャス 南アフリカとまさに全世界です。実はこの金星の日面経過は、1761年と1769年に発生するのですが、あのキャプテンクックも1769年の時にタヒチの観測者として参加しています。

各地の観測結果は、世界から集められますが、何せフェラデルフィアからロンドンまで郵便で2〜3か月かかる時代です。1〜2年後かけて収集分析し結果を出すという長期戦になります。またデータをどう計算するかも容易ではありません。しかしようやく地球から太陽までの距離が1億5089万㌔と公表されます。これは現在の測定値1億4960万㌔と1%内の誤差ですから、なかなかのものです。

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 正直言って本書を読む前は、これはフィクションではないかと勘違いしたくらいです。こんな覇権争いの時代でかつ敵対しあう国の科学者たちが協力しあうとは到底思えなかったのです。しかし、本書を読み進めて、そこに植民地支配のための調査という側面があったとはいえ、「天界の真実を明らかにする」という最大のミッションのためには、世界が一つになるんだということを知り、学問の力の凄さをあらためて知りました。金星はある意味で世界を一つにしたのです。