少年シニア 55歳から学ぶ理科

生命のルーツを知ることは自分を知ること。生命の不思議で人生ワクワク致しましょう!

№172📕アイアイを見たと言ってはならぬ

お元気ですか。少年シニアです。

日本では童謡などから愛されキャラとして人気の「アイアイ」ですが、実は地元の

マダガスカルでは悪魔的な存在として恐れられています。

実はアイアイという名は、現地の人が現地の言葉で「ハイハイ(私は知らない)」

と言ったのを白人が「アイアイ」と聞き間違え、そのまま定着してしまったという

説もあるそうです。

アイアイを見た者はと不幸になると言われているので、もし見ても「私は知らない」

としらばっくれないといけないそうなのです。

ただ、夜行性で警戒心も強いので、発見することは難しく、その生態もあまり分かっ

ていないというのが実情のようです。

 

アイアイの謎

アイアイの謎

 

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 最初にアイアイが発見されたとき、専門家たちは、アイアイを猿の仲間と考えずに、リスの仲間と考えていました。身体の構造の多くにリス類との共通点が見られたからです。しかし、古生物学者のオーエン教授がアイアイの大臼歯の歯冠が霊長類と同じような複雑な構造でリス類の臼歯とは全く違っていると指摘し、サルの仲間に位置付けられました。ただアイアイの独自性は霊長類の中で際立っており、アイアイ科として他のグループとは独立した形になっています。

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 アイアイの身体で何といっても特徴的なのは、際立って長い中指です。この中指でラミーと呼ばれる高木の種子の硬い殻に穴をあけて中身の胚や胚乳を食べるのです。面白いことに美味しそうな果実の果肉は捨ててしまうのです。実はラミーの胚や胚乳はクルミと同程度のカロリー(100gあたり584㌔㌍)があり、栄養価が非常に高いんですね。

 またアイアイは昆虫なども食べますが、昆虫が身を潜めている幹などを中指で叩いて昆虫の居場所を見つけ出し食べます。アイアイの大きな耳は中指のたてる音を正確に聞き取るためという説が有力だそうです。

                                    


アイアイ (上野動物園)

             

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 アイアイの寿命は結構長くて20年くらいと言われていますが、子どもの母親への依存期間は長く、1才になっても母親の乳首を吸っているそうです。これは中指の使い方に習熟する期間がかなりかかり、独力で餌をとることができないからではないかと、島氏は指摘しています。

本書の著者でもある島泰三氏は マダガスカルにおいて国際協力事業団のスタッフとして自然保護に尽力されるとともに、自ら設立したNGOアイアイファンドの代表として今も精力的に活動されています。森林の減少に歯止めをかけるとともに、自然保護区内の実態を詳しく調査しそれを広く発信することで、自然保護の気運を高めようとするものです。私もこの活動に共感し、些少ながら寄付させて頂きましたが、持続的なかかわりの中で、生命のベースとなる自然環境がよりよくなることを願ってやみません。

 

↓ アイアイファンドのHP

http://www.ayeaye-fund.jp/

 

今年の「55歳から学ぶ理科」は今回で終了。

ご愛読いただいた方に心からお礼申し上げます。

そして来年も引き続きよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

№171📕レムールの聖地マダガスカルの未来

お元気ですか。少年シニアです。

霊長類のルーツを語るときに、レムール(キツネザル類)は、忘れてはならない

存在です。レムールは、霊長類の原始の姿をとどめているからです。

そして、これらレムールの大半はアフリカ大陸ではなく、その東の片隅に位置する

マダガスカル」に棲息しています。

そして、最初はサル類と認定されずリス類とされていた「アイアイ」も、この

マダガスカルに棲息しています。

マダガスカル アイアイのすむ島

マダガスカル アイアイのすむ島

 

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   まず、アイアイの話しに入る前に、レムールの聖地ともいえる「マダガスカル」について確認しましょう。

マダガスカルは1億6千万年前にアフリカ大陸から分離しました。それ以前はマダガスカルゴンドワナ大陸(アフリカ大陸・マダガスカル・インド・南米大陸オセアニア大陸・南極大陸が一つになった超巨大大陸)の中心の核に位置していましたが、プレート運動によって切り離され、最終的にアフリカ大陸の東側に落ち着いたのです。

インド大陸が北上してユーラシア大陸に衝突したのと違い、マダガスカルは世界で第4位の面積(日本の約1.5倍)を誇る島になりました。そして超大陸の分離により、気候はより温暖湿潤化し、雨の恵みによって植物が育ち大森林地帯がマダガスカルに形成されました。

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 このことは、マダガスカルに生きる動物にとっても、大きな恵みをもたらしました。島として隔離されたことで、アフリカ大陸のような強力な大型肉食獣が存在せず小型の動物が、棲み分けして自分の生活エリアを確保することができたからです。

レムール類の先祖もこうした環境に守られながら、豊かな森林の樹上で果実やそれにむらがる昆虫などを捕まえて成長し、さらに棲息エリアを棲み分けることで、多様化していったのでした。

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 上野動物園には不忍池に隣接して「アイアイの住む森」が造られ、アイアイの他に、ワオキツネザルなどのレムール類や、マダガスカル食物連鎖の頂点にいるフォッサや、ホウシャガメなど、マダガスカルの固有種が多数展示されています。

実は本書の著者である島泰三氏は、これらの動物を多数マダガスカルから送り出してきた方で、本書でもお役所仕事に振り回されながらも様々な手段を駆使して動物たちを上野に送り出してきた経緯がユーモラスに書かれています。

 

↓ 上野動物園内のバオバブの木をバックに固まって暖をとるワオキツネザル

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↓ アイアイのお隣の部屋で好物のニンジンをたべるハイイロジェントルキツネザル

  野生では竹を主食にしているそうです

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 マダガスカル最強の肉食獣「フォッサ」

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 このようにマダガスカルは小宇宙の中で多様な生き物が共存する素晴らしい楽園のように見えますが、マダガスカルに棲息する生き物にとって、その未来は予断を許さないものがあります。その原因は何といっても森林の減少です。マダガスカルの豊かな森林は2000年前から入植した人類により農耕地や牧草地として焼き払われて今に到っているのです。

そのためこれまで多くの固有種が絶滅しました。アイアイの3倍もの体重があったジャイアントアイアイをはじめ2種が絶滅しました。以前はもっともっと多様で豊かな生命のドラマが展開されていたのです。

2000年前ではあっても、この小宇宙にやってきた最初の人間たちがすでに農耕文化をもっていたことは、マダガスカルの自然にとってある意味不運でした。

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 しかし、ここにきてマダガスカルの豊かな自然の保護に力を入れようとする活動が広がってきました。経済だけを優先させても明るい未来は開けないことに気付いた人間たちが増えてきたのです。本書の島泰三氏は、私財も投じつつ現地の人々や政府の力をうまく活用しながらマナサムディー山地に霊長類センターを建て、アンジアマンギラ―ナの森14380ヘクタールを自然保護区とすることに成功しました。今は野生のアイアイを守るためのアイアイファンドの設立者として活動されているとのことです。

 

少し長くなりましたが、レモール類とはまた異なるオンリー1的存在のアイアイの生態については次回にまとめます。

 

 

№170📕 われら霊長類が辿ってきた道

お元気ですか。少年シニアです。

宇宙の誕生からはじまったこのブログも、ようやく我が人類属する霊長類が大きく進化

をとげた新第三紀(約2300万〜260万年前)にまでたどりつこうとしています。

当面本ブログでは霊長類を中心に展開させていこうと思っています。

まずは、霊長類の全体像を確認しましょう。

新しい霊長類学―人を深く知るための100問100答 (ブルーバックス)
 

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 現在霊長類はおよそ350種が存在していて、大きく2つのグループに分けられます。まず一つめが曲鼻猿類で、霊長類の祖先的な特徴を多くもっているグループです。

キツネ猿類やロリス類などが該当し、歌でも有名になったアイアイもこれらのグループになります。キツネ猿類はマダガスカルとその周辺の島にしか存在せず、かなり特殊化しています。

↓  マダガスカルだけに棲息するというクロシロエリマキキツネザル

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そしてもう一つが直鼻猿類で、メガネ猿類と真猿類が含まれます。真猿類は、文字通り猿らしいグループで中央〜南米に棲息する新世界ザル(広鼻猿類)と、アフリカや東〜東南アジアに棲息する旧世界ザル(狭鼻猿類)にわかれています。我々人類は真猿類に属し、旧世界ザルのグループから枝分かれして誕生したのです。

↓われら二ホンザルは旧世界猿でオナガザル科に属します。

 道具を子巧みに使いこなし北限のサルとしても有名です。

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 霊長類のルーツをたどると意外とその歴史は深く、その祖先は約6500万年前、恐竜が絶滅したころの時代にまで遡ります。そして大変興味深いのが、その化石は、現在霊長類の活動領域となっている地域ではないアメリカのモンタナ州の地層から見つかったということです。どうやら霊長類が誕生したのはアフリカやアジアではなく北米のようなのです。

実は駱駝のルーツも中東や北アフリカではなく北米ですが、これは気候変動による移動の結果だそうです。新生代も後半に入ると次第に地球が寒冷化し、その結果高緯度ながら熱帯の様相を呈していた北米も次第に寒冷化しました。その変化に対応して、霊長類や駱駝が南下して自分の生活エリアを移動させたというわけです。

寒冷化によってベーリング海峡が陸橋となってユーラシア大陸・アフリカ大陸への移動が可能になったのでしょう。

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 そして真猿類の中から、類人猿と呼ばれるグループが誕生しました。類人猿は、普通の猿と異なり尻尾がなく大脳が発達していているグループで、我々ヒトを除く「テナガザル」「オラウータン」「ゴリラ」「ボノボ」「チンパンジー」がこれに該当します。

↓ 大型類人猿オラウータンのこども。この姿や表情をみると我々の近縁であることがよくわかります。

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これら類人猿も意外と歴史があって、約2300万年前(新第三紀)には存在していたようです。手の長いテナガザルの祖先が、その長い手を巧みに利用し樹木をぶらさがって移動することで、尾の必要性が薄れて、尾のない類人猿の道を開いたのでしょう。そして類人猿はさらに、多様化してその勢力範囲を拡大していったのです。

本書では遺伝子の解析や化石のデータと統合した遺伝研究所の斎藤氏の系統樹が紹介されていますが、それによるとオラウータンが約1400万年前に、ゴリラが約730万年に、チンパンジーが約540万年前にヒトと分岐 ボノボが約250万年前にチンパンジーと分岐したとされています。

↓ 大人のチンパンジー軍団。群れでなにかを企んでいるのでしょうか。

  我が人類も群れることが大好きなところを見ると、同じ穴のむじななのか

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ただ、ご存知の通り類人猿は非常に厳しい状況にあり、絶滅が危惧されているグループです。類人猿の大半は森に棲んでいるので森が減少されれば一気に生命の維持は困難になるのです。そして森林の減少は類人猿と最も近縁である我々人類が引き起こしているというのはあまりにも皮肉です。

まずは我々が、自分の所属先である霊長類(サル目)を正しく理解し、さらに近縁である類人猿について正しく理解するところから始められればと思います。その関係で当面ブログは霊長類について取り上げる予定です。

 

 

 

 

 

 

№169📕日本にサイが闊歩していた熱帯の時代

お元気ですか。少年シニアです。

日本人ですから、日本列島がどのようにしてできたのか大変興味があります。

日本の地形は、ユーラシア大陸の東端からもぎとられた部分とプレートが沈み込む

際に堆積された付加体によって作り上げられているそうですが、いろいろ調べてみる

と、かなり複雑な過程を経て現在の日本に到ってるようです。

日本列島ものがたり (1978年)

日本列島ものがたり (1978年)

 

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 実は新生代第三紀(約6500〜2600万年前)の日本は、ハワイさながらの熱帯の気候だったそうです。日本はまだユーラシア大陸の一部でしたが、大陸内部が乾燥気候であったのにひきかえ、日本の位置にあたる沿岸部分はかなりのむし暑さでした。

どうしてそんなことがわかるかというと、それはこの時代から出土する化石でわかるのです。植物では、ヤシの仲間のニッポンサバリテスやニッポンバショウが茂り、スズカケやケヤキ・ハスなどの化石が発見されています。また石狩や筑豊炭田に埋蔵された石炭の材料は、この時期に繁っていた被子植物だそうです。

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 そして海には、現在は南洋の海にだけ浮かぶオウムガイの一種であるブルチュルオウムガイが北海道の海まで日本の全域に住んでいました。軟体動物としては、現在オーストラリアにしか住んでいないピカリア貝の1種であるヤベピカリアのほか、多くの二枚貝が棲息していました。

「ヤベビカリア」の画像検索結果(ピカリア:ウィキペディアより)

大陸では、ツノがないサイ、サイ・ワタナベアミノドンや、カバやイノシシの近縁、アントラコテリウムと言われるサイほどの大きさの動物も棲息していました。いずれにしても、今の日本の気象とは相当異なる様相だったのです。

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 その後、様々な造山活動やプレート運動によって、日本列島の土台となる部分は大陸からはぎとられ、そこに海水が入り込み小さな孤島になり、またそれが離れたりくっついたり、更にプレートが沈み込む際に堆積される付加体がくっついたりして、次第に現在のような地形となっていったようです。

そして決定的だったのは日本海が誕生したこと。日本海が誕生したことにより,大陸から切り離され、東西南北広がった領土・領海の中で、世界でもまれな多様な植物相や、固有種の生き物(約130種)が棲息するようになったのです。

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 こうした多様性は、日本がずっと大陸から分断されていたわけでなく、その時々の気候により大陸とくっついたり離れたりしていたことによるものだそうです。(氷河期が終わる1万年ほど前には、北海道は大陸と陸橋でつながっていました)。

そのため、固有種のパラダイスと言われる完全な孤島「ガラバゴス諸島」よりも,わが日本の方が固有種は多いそうです。

こうして見ると、いまわれわれが住む国土は固定されたものではなく、その時々で形をかえ、生物に影響を与え今に至ったことがわかります。もちろんその時間は気が遠くなるほど長いものではありますが、これからも万物は流転し形をかえ、その壮大なドラマを続けていくことでしょう。

 

 ↓ 2:40に本文でも紹介したワタナベサイが登場します。

       こちらで紹介されている絶滅は大半が人間によってもたされたものでしょう。


日本の絶滅動物 画像集

 

 

 

 

№168📕象から学ぶ大型のメリット・デメリット

お元気ですか。少年シニアです。

前回、哺乳類の大型化に言及しましたが、象の祖先と言われる「パレオマストドン」

を例にしてそのことを考えていきたいと思います。

へんな古代生物

へんな古代生物

 

                                       🐘    🐘    🐘    🐘

 パレオマストドンは象の祖先ですが、体長は約2メートルとまだまだ小ぶりで鼻の長さも今の象に比べるとかなり短いです。牙も生えてはいるもののこれもそんな迫力を感じません。彼らは約3500万年前、アフリカの水辺近くに棲息したと言われています。

「パレオマストド...」の画像検索結果

ただ体長2メートルと言っても、まだまだ肉食獣も大型化していない中で、そう脅威となる天敵は存在していなかったでしょう。また、当時アフリカとユーラシア大陸は物理的につながっておらず、閉ざされたアフリカ大陸の中でゆっくりと繁栄していくことが可能だったのでしょう。

              🐘    🐘    🐘    🐘

 競争状態が薄く脅威がなければ、一般的には生き物は大型化すると言われています。パレオマストドンは大型化する中で足も長くなりましたが、その一方で一番大切な水をどうやって飲むかというやっかいな課題に直面しました。口の位置が高くなると、水が飲みにくいのです。こうした問題に直面したのは象の祖先だけじゃありません。馬やキリンの祖先も同様の問題に直面しました。

馬やキリンなどは、大型化する中で、首の長いものが食糧や水の確保という生存面で欠かせない機能面で有利となり、その方向で進化していきました。

            🐘    🐘    🐘    🐘

しかし象の祖先は違いました。鼻を長くすることでその問題をクリアしたのです、鼻は水を吸引する機能をはたし、鼻の長いものが生存面で有利となり、その方向で進化していきます。こうして次第に長鼻目の名相応しい今の姿に変わっていったのです。

また大型化したことで水分の蒸発量も尋常ではなくこの点も、大きな課題でした。それで、象は身体の到るところに深いしわをもつことで身体の表面積を大きくし、水分の蒸発を防ぎました。

           🐘    🐘    🐘    🐘

 ただ、象はこの大きさゆえ食べ物の確保が急務となります。食べる量も尋常ではなく今の象も1日100㌔摂取するそうです。そのため大きな気候変動がおきて、植物の生態系に大きな変化が生じると餌の確保が困難となり、象もその生を維持できないのです。そのため長鼻目の動物は数多く絶滅しています。ナウマン象やマンモスもそうした形で絶滅し進化のいきづまりの動物になってしまいました。

また、前回のブログでも指摘しましたが、人類の誕生がこれら絶滅した象にも及んできます。人類は次第に群れを形成し道具を開発する中で、これらの大型の生き物を貴重な食糧源としてとらえ、狩りをするようになったからです。ぞの目だった姿が仇になったのです。

 

象の世界を知ってしまうと、声を大にして「大きいことはいいことだ」となかなか言えない現状があるようです。

 


たけしの万物創世紀「ゾウ 」

 

№167📕哺乳類が天国だった時代

 お元気ですか。少年シニアです。

哺乳類天国という本を読みました。隕石落下という突発的な事件によって、食物連鎖の頂点に約1億5千万年近く君臨していた恐竜が絶滅し、それまで恐竜の陰に怯えながら小さな身体で何とか雨露をしのいでいた哺乳類が、次第に勢力を拡大していった様子がィェ―ル大学のピーポディ自然史博物館に描かれているそうです。

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その壁画の名は、「哺乳類の時代」。しかし、この壁画を注目する訪問者は少数で、大多数の人は、大ホールに飾られた恐竜を中心とする「爬虫類の時代」がお目当てなのです。「哺乳類の時代」は大ホールの裏の薄暗い部屋にひっそりと飾られていると言います。

少しへそまがりな本書の著者ウォレスは、この人気の乏しい「哺乳類の時代」にインスピレーションを受けて、恐竜後に哺乳類がどんな経路をたどって今に到ったのか、またそのことに強い好奇心と情熱を注いだ学者について本書で詳細に記しています。

哺乳類天国―恐竜絶滅以後、進化の主役たち

哺乳類天国―恐竜絶滅以後、進化の主役たち

 

            🐆   🐁   🐏   🐪   🐘

  ただ、注意しなくてはならないのは、哺乳類といっても、この壁画に描かれているのは人類以外の哺乳類であって、我々人類はその中に描かれていないことです。本書のタイトルとなっている哺乳類天国というのは人類が誕生するまでの状況をさしているのであって、人類の進化とともに人類以外の哺乳類はまさに受難の時期を迎えます。

おそらく、この博物館の「哺乳類の時代」が人気がないのも、我々人類の姿が見当たらず自分の問題としてとらえられていないからでしょう。どうせ我々との結びつきが感じられないなら、その巨大さで他を圧倒する恐竜の世界をみている方がワクワクすると誰もが思うでしょうから。

            🐆   🐁   🐏   🐪   🐘

 しかし、そこにまだ人類の姿が見当たらなくとも、それまでの哺乳類の姿をあらためてみていけば、いま人類の脅威にさらされながら細々と生きている現生の哺乳類につながる個性的な哺乳類の姿を見かけることができるでしょう。白亜紀以降に生命をつないだ哺乳類は、大陸の衝突・移動や火山活動等による大きな気候変動に翻弄され絶滅を繰り返しながらも、何とか生命を引き継いで現在に到ったのです。

            🐆   🐁   🐏   🐪   🐘

 そして本書には、この時代に哺乳類の繁栄・大型化をうながしたのは、恐竜の絶滅やまだ人類が登場していないことに加えて、被子植物が格段に進化し多様化したことも指摘されています。当然哺乳類は、喰うもの喰われるものの関係で成り立つわけですが、とりわけ喰われる側の生き物が繁栄しなければ、喰う側の繁栄は成り立ちません。その意味で、被子植物の進化が、草食動物にとって繁栄のための原動力になったことは想像に難くありません。

             🐆   🐁   🐏   🐪   🐘

 この哺乳類の天国の時代においても生命の進化の鍵を握っていたのは植物だったのでしょう。白亜紀の大量絶滅においても植物は動物と比べて耐性が強く、絶滅の度合いも動物に比べると低かったと言います。植物は、いち早く回復し、白亜紀時代以上の進化・多様化を実現していったのです。

そして昆虫が哺乳類に先立ち、被子植物との共進化をはかり繁栄しました。そしてそれらを食べる小型獣や鳥類が進化し、またそれらを餌にする大型肉食獣が繁栄していく。このサイクルこそが自然の掟でした。

しかし、人類の登場でその不文律がどうもあやしくなり、決して哺乳類の天国といは言えない現在の状況を哺乳類の一員である人類が創り上げてしまったのは何とも皮肉なことと言えるでしょう。

 

 

№166📕多彩な顔と知恵をもつ賢者フクロウ

お元気ですか。少年シニアです。

繁華街池袋にフクロウがいることを知りました。ただ、それは造り物のフクロウ

で、「いけふくろう」と名付けられ、待ち合わせの恰好の場所になっています。

「いけフクロウ」の画像検索結果

フクロウの鳴き声は、昔は街でもごくあたりまえに聞かれましたが、今は中々

聴くことがかなわなくなりました。

前回哺乳類の中で闇の世界を支配するコウモリを紹介しましたが、今回は鳥類の中で

闇の世界を支配するフクロウのお話です。

                   🐥              

 フクロウは冷静で時に物怖じしない姿から古来より森の哲学者と崇められていましたが、なかなかどうして、獰猛な猛者です。

鳥類の中で鷲や鷹と同様「猛禽類」に属し、鳥類の食物連鎖の頂点にいるのです。鷲や鷹には力及ばないので、太陽が照っている時間は、鷲や鷹にその支配を譲り、自らは太陽が沈んだ闇の時間での支配者になることを決めたのでしょう。

               🐥        🐥           

 フクロウの強みは何といっても音をたてずに飛べるつばさにあります。羽毛は一枚一枚の幅が広く、表面もとてもやわらかく滑らかなので、飛んでいる時、つばさに空気があたっても空気は滑らかに流れて音が出ないのです。これにより獲物に気付かれるとなく接近できますし、逆に敵からは身を守ることができます。

実は最高時速300㌔を誇る「500系新幹線のつばさ型パンダグラフ」は、フクロウの翼の構造を参考にしたそうですよ、

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 ただこのフクロウの飛ぶ音がしないことが、フクロウの研究を困難にしていると本書では述べられています。さらに夜行性・森林性ということもあって、夜活動しているところを調査しようと思っても見えにくいのです。巣箱や発信器などの装置を使って、見えなくても活動の様子がとらえられるよう工夫が必要になります。

本書で紹介された研究者は発信装置をもって森に分け入って警察に不審者と間違えられたというエピソードが紹介されていますが、フクロウの研究もなかなか大変です。

           🐥      🐥      🐥      🐥 

 フクロウの種は146種と多彩で、その顔立ちも実にユニークです。動物園でシロフクロウを見たときは抱腹絶倒しました。小馬鹿にしたようにこちらを見て笑っているように見えます。そして首を180度回転させて煙にまくのです。

このシロフクロウは北極圏の荒涼としたツンドラ地帯を住処としていますが、放浪して北海道に姿を見せることもあるそうです。

フクロウの賢さや敏捷さが伝わってくる動画です


掛川花鳥園バードショー シロフクロウ snowy owl

 

  メンフクロウも奇妙で幽霊のような顔をしています。しかしこの顔に騙されてはいけません。メンフクロウは左右の耳の位置や大きさ、形。向きが違います。それで両方の耳に達する音の時間差で、音を出した獲物の位置を正しく認識し捕まえるハンターなのです。ネズミを主食とするので、ネズミに穀物を狙われて困っている農園主は、メンフクロウをとても大切にしているそうです。

 この動画はメンフクロウだけじゃなく数多くのフクロウの姿が見られます

メンフクロウ! - Lovely Owls!

最後は、樹木の全くない荒れ地の穴で生活するという「穴堀フクロウ」。自分で穴を掘ると思いきや、他の動物が掘って、今は使われていない穴をちゃっかりもらいうけます。だから正しくは「穴借りフクロウ」ですね。こいつは中々賢い奴で、近くに馬が放牧されていたりバイソンがたりすると糞を巣穴に運びます。糞には甲虫類が卵をうみつけることが多いので、ここで生まれた幼虫を食べる算段なのです。また糞の匂いは穴堀フクロウの匂いを消してくれるので、敵にきづかれないようにすることもできるというわけです。

穴堀フクロウとリクガメのからみが最高に面白い動画です。


Burrowing Owls | Wild Animals - Planet Doc Full Documentaries

 

やはり、フクロウはしたたかな知恵者でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

№165📕ユニークさとニッチに活路を求めたコウモリ

お元気ですか。少年シニアです。

自力で自由に飛ぶことができる唯一の哺乳類。それがコウモリです。

コウモリのユニークさは、海に戻ったクジラやイルカ以上のものがあります。

また自然対応能力は素晴らしく、南極などの極地以外にはどこにでも生きています。

そんなコウモリですから種の数は約1000。これ哺乳類ではネズミ類に次ぐ多さです。

最古のコウモリの化石は約5200万年前の地層から発見されており、その化石にはち

ゃんとしたつばさがあったので、実際は6000万年くらいから存在していたのではな

いかと思われます。特殊な身体のわりにコウモリの歴史は古いのです。

原生林のコウモリ 改訂版

原生林のコウモリ 改訂版

 

                  ★          

 本書はそのコウモリの魅力に憑りつかれた小学校教諭の遠藤先生のコウモリの研究記録です。時は昭和30年、若干22歳の小学校教諭の遠藤先生は、岩手の過疎地の分校の教師として働き、地元の村人やその子供たちと触れ合う中で、この過疎地の自然がいかに素晴らしいかを実感するのです。そして子供たちの豊富な自然への知識にも舌をまくようになります。

 そんなある日、教え子の輝男が死んだコウモリをもってきました。「ネズミケェモリ」と笑って名前を教えてくれました。これが、遠藤先生がコウモリに嵌る契機になりました。そしてさっそく遠藤先生は、こどもたちにイソップ童話のこんな話を聞かせたのでした。

           

 けものと鳥が2つにわかれて大戦争したとき、コウモリは旗色のよい方を飛び回りました。鳥が勝ちそうになると、つばさがあるから鳥だといい、けものが優勢になるとネズミの仲間だと言ってけものに入りました。やがて争いが収まって鳥とけものが仲直りしたとき、コウモリはどちらも仲間はずれにされてしまいました。それで、日が暮れてからでなくて。出歩くことができなくなったということです

 

そして、授業は「コウモリは鳥かけものか」という問いかけにつながっていきます。すると生徒の一人が「おら、乳の大きなコウモリとったことがある。乳のある鳥ずものあるわけがねぇ」と言いました。豊かな実体験を通したやりとりによって、見事にコウモリが哺乳類であることを解き明かしたのです。

何と素晴らしい授業でしょう。教師が一方的に本に載った知識で教えるのではなく、こどもたちの知恵や知識も交えて、真実にせまっていったのです。

              ★     ★

 少し話しはそれてしまいましたが、それほどコウモリは人間の好奇心を駆り立てる存在なんですね。コウモリは視力は極めて弱い生き物ですが、自ら出す反響音から獲物や敵の存在を確認し、超音波レーダーをもとに小さな昆虫などを食べます。夜間こそが、彼らの武器を生かして狩りができる時間なのです。

さらにコウモリの飛行はモモンガやヒヨケザルのような単なる滑空ではなく、腕や指を動かして翼の形を自由に調節し尾翼も動かすことで、鳥にもできない旋回や宙返りもするようで、こうした能力は身を守ったり相手を追い込む点においても大きな武器となるでしょう。これだけの自由度はコウモリならではのもので、そのため非常に身体が軽くなっています。翼を広げると20㎝もあるコウモリの体重は何と6gしかないそうです。

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 コウモリは進化の過程で身体を軽量化し飛行能力を獲得した上で、夜の闇の世界に生き場所を求め、世界の到る所で1000種以上の種をもつまでに発展していきました。

コウモリを知るにつけ、ユニークさとニッチに活路を求めるオンリー1戦略は侮れないなと思った次第であります。

 

↓ 私も今年3月に訪れた小笠原の固有種「オガサワラコウモリ」


【4K】オガサワラオオコウモリ


オガサワラオオコウモリの飛翔

 

       

 

 

№164📕大陸の衝突が日本の緑豊かな国土を創った

お元気ですか。少年シニアです。

以前ブログで500万年後、1億年後、2億年後の地球の生き物を予測した動画

を紹介したことがあります。このとき予測のもとになったのが、その時代の大陸

分布の予想図でした。大陸分布の配置によりその時代の気象状況が予測でき、

更にその気象に適応できる生き物の姿が予測できるということでした。

プレートテク二クス理論の進化により、将来の大陸分布がどうなっているかを

予測することはさほど難しいことではないそうで、予測によれば一億年後には、

ワイ島はプレートの移動により日本列島に衝突するそうです。

プレートにもよりますが、毎年プレートは概ね数センチ移動しており、過去にも

こうした大陸の移動と衝突は繰り返し行われています。

例えばインド亜大陸は、約1億8千万年前にアフリカ大陸と袂を分かち、次第に

北上して約4〜5千万年前にユーラシア大陸に衝突しました。

 

 ↓ 2億年前からの大陸移動の様子がよくわかります。


マントル対流の数値シミュレーションによって再現された2億年前から現在までの大陸移動

 

いちばんやさしい地球変動の話

いちばんやさしい地球変動の話

 

 

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 インド亜大陸ユーラシア大陸の衝突は、その周辺部分にどのような影響を及ぼしたでしょうか。最初のうちは衝突されたユーラシア大陸の一部が押し出されるという現象が起こったと予想されます。現在のインドシナ、中国南東部のブロックはこのようにしてインドの北から現在のアジア大陸の東の方へ押し出されてしまったものです。

そして次にインド大陸ユーラシア大陸の下に潜り込んでユーラシア大陸の縁部分の海に堆積していた部分の隆起を促しました。これがヒマラヤ山脈チベット高原の成り立ちで今から1500万年前のことです。    

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 次第にヒマラヤ山脈は高くなり、近隣の気候を激変させました。まずヒマラヤ山脈が壁となってインド洋からの湿った風を東に追いやり、季節風となって雨を降らせるようになりました。逆にインドの西側は砂漠化していきました。

ヒマラヤ山脈の形成は日本の気候にも強い影響を与えていて、仮に隆起が弱くヒマラヤ山脈の高さが今より半分だったとすると、季節風によって日本にもたらされる降雨量も半分以下となり、現在のような緑豊かな国土は形成されていなかったとされています。高さが半分でもそうですから、インド亜大陸の衝突がなくヒマラヤ山脈自体が形成されていなければ、日本の国土はもっと乾燥した状態で、四季折々の美しい現在の日本とはほど遠い状況になっていたでしょう。   

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 実は日本列島自体、異なるプレートが衝突して片方のプレートが沈み込む際に生じる付加体(沈みきらなかった海底の堆積物や大陸からはぎとられた塊)を材料にしてできあがっているそうです。(伊豆半島のようにもともと単独の塊だったものが、日本列島と衝突してくっついた部分もあります。丹沢山地はその衝突で隆起してできました)

大陸や島の形成は地球のダイナミックな変動によって離合集散してできていて、それによって気候も大きく様変わりします。まさに地球自体が生き物であることを自覚して、つきあっていく必要がありそうです。

 

インド亜大陸の移動とヒマラヤ山脈の形成の因果関係がわかりやすく解説されています。

 ヒマラヤ山脈が衝突以前は海の中にあったことの証拠が続々と紹介されています。

(13:50〜19:00 インド亜大陸大陸移動の図示による解説があります)


巨大山脈の誕生 1987

 

 

№163📕象の近縁ジュゴンは平和主義者

お元気ですか。少年シニアです。

イルカやクジラ同様、一旦上陸したものの再び海に戻っていった動物に「ジュゴン」や

マナティー」ら海牛類がいます。牛という漢字が使われていますが、そのご先祖さま

は牛とは接点はなく、象などの長鼻目が近縁だそうです。主食は象同様草で、海に棲む

哺乳類では唯一海牛類だけが草食です。またムーミンに似た何ともユーモラスな顔を

しているので、結構人気がある生き物です。今回は海牛類のルーツや生態を記します。

 

ジュゴン 海の暮らし、人とのかかわり (平凡社新書)

ジュゴン 海の暮らし、人とのかかわり (平凡社新書)

 

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 ジュゴンは約5500万年前の陸上草食獣がそのルーツで、当初は豚くらいの大きさで汽水域や海岸に棲息する水陸両生の生物だったと言われています。それが約3500万年前には前肢・後肢が完全に退化して現在のジュゴンに似た体型となって完全に水の環境へ適応します。その後、太平洋やインド洋で進化をとげたジュゴンのグループと大西洋を挟んでアメリカとアフリカ沿岸に生息するマナティーのグループに分かれて進化していきました。

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 ジュゴンのグループは更に寒冷水域に適応したステラカイギュウとジュゴンに枝分かれしましたが、ステラカイギュウは、⒙世紀後半に人間の乱獲によって絶滅してしまいました。人間を恐れなかったことが仇になったと言われています。

実はジュゴンマナティーも人間への警戒心が弱く、特にマナティーは自ら近づいてくることもあるそうです。マナティーは冬になって海水温度が低くなると水温が高い淡水領域にも進入してくるので、人と接触する機会があることも関係しているのかもしれません。

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 彼らは400㌔もの巨体なので、その身体を維持するために自分の体重の1割ほどの量の海草を食べる必要があり、そのため多くの時間を海草を食べることにかけています。通常はあまり移動することはありませんが、海草を食べつくして新たな海草を求める時や水温が変動したときは移動します。ただ平均時速4キロ程度のゆったりした移動で、このあたりはクジラやイルカとはスピード感が違います。

この巨体のせいか、ジュゴンを狙う生き物もそうおらず、50〜60歳まで生きるご長寿動物と言えます。(いま伊豆熱川のワニ園にいるマナティーも50歳以上とか)

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 ジュゴンマナティーは草食ということや、天敵に狙われる機会もすくないためか非常に温厚な生き方をしています。鳥羽水族館にいるセレナという雌のジュゴンは、同じ水槽にいるウミガメのカメ吉ととても仲が良いそうで、じゃれあっている泳いでいる姿がユーチューブにも多くアップされています。

 


鳥羽水族館・ジュゴンのセレナとウミガメのカメ吉

 

 海草を主食とするジュゴンマナティーは、浅瀬の沿岸沿いを遊泳することが多いため、網や船のスクリューで身体を傷つけたりする場合もあるといいます。またいま基地の移転計画が進んでいる辺野古近海には数少ないジュゴンが生息しており、建設がジュゴンの生息に与える影響が懸念されています。

ジュゴンが海の中でこれからも穏やかに生き続けていくために人間も様々な知恵を出して共存共栄をはかっていければいけないと思います。

 
ジュゴンが生きる沖縄の海


絶滅危惧種のジュゴン Dugong of the endangered species in Okinawa